#2『ベッドが来た日』

友人から不用になったベッドをもらいました。
本当は来週の予定だったのですが、ありがたい事に予定が前倒しになりました。
新しい(古い?)ベッドは無印良品のモノ。なので自分で分解が可能です。
車の後部座席を倒せば、なんとか自分で運べ送料も掛からない!と思ったのですが—

僕「ぐぬぅぅぅ!」
お「ぬおぉぉぉ!」

苦戦しました。
お布団小僧がいなかったら、恐らく僕はフレームを駐車場から自宅のある4階へ運ぶことが出来なかったと思います。
木製の無印ベッドは、その見た目とは裏腹に予想以上にスチールパーツが多く重いのです。
同時にスプリングと同じ機能を果たすパーツなどは繊細な感じもし、ダイナミックな搬入は御法度なのです。

僕「そっち!そっち上げて!」
お「ほい!」
僕「行くよ!」
お「ゆ、ゆくり!ゆくりよ!」

ガリガリ…

僕/お「あ…(汗)」

やってしまいました。
あと一歩で部屋まで到着と言うところで、僕達はベッドフレームを擦ってしまいました。
擦れたベッドの角っこは、予想通りささくれだっています。

僕「やっちゃったね…」
お「ささくれちゃったね…」

気を取り直し、僕達はまたフレームを部屋まで運びました。
何とか部屋まで辿り着いた時には、すっかり汗だく。そして—

僕「…。(感動)」
お「…。(感涙)」

妙な達成感に包まれます。
僕とお布団小僧は、思わずハイタッチで笑みを交わしてしまいました。

僕「助かったよ」
お「おぉ」
僕「かたじけぬ(平伏)」
お「おぉ(平伏)」

この作法が合っていたのかどうかは分かりません。普通に「ありがとう」と言っても恐らく通じた事でしょう。
でも無事にベッドの搬入を終えた僕は、その安堵感からか、ちょっとふざけて武士の真似事の様に「かたじけぬ」とお布団小僧にお礼を言ってみました。するとお布団小僧も、まさかこの時代の人間がその様な事をするとは思っていなかったらしく、慌てた様子で僕に一礼をしてくれました。
互いに目を見合わせた僕達は、何だかおかしな気分になり、また笑いあいました。

さて、搬入が済めば後は簡単です。分解した脚とフレームをネジで固定するだけ。
お布団小僧は僕がベッドを組み立てる様子を、興味深く観察しては「おぉ」と感心している様子です。
妖怪と言えど、そこは男の子。この手の作業にはやはり熱くなるモノがある様子です。
そして僕が、いつの間にかネジ締めの作業に没頭してる時でした。

ガリガリ…ガリガリ…

フレームの反対側で、何か音がしました。
えぇ。どこか人を不安にさせる音です。

僕「な、なにしてるの…?(唖然)」
お「…おてつだい(熱中)」

道具箱からいつの間にか精密機器用ドライバーを持ち出したお布団小僧が、ネジ締めのマネをしてたいのです。
しかもあろう事か、ドライバを突き立て回転させている箇所は、ネジでもなければ金属パーツでもない、木製ベッドのフレームそのものだったのです。

お「ち、ちがう…?」
僕「う、うん…ちょっとだけ…」

空気を察したのか、お布団小僧は不安げな表情を浮かべ、僕を見上げました。
妖怪と言えど、小さな子供が進んで手伝いをしたにも関わらず、かえって問題になってしまうと言う事は、まぁ多々あります。でも、やっぱりここは決して怒ってはイケない事なのだとも思います。
つまらない感情はグッと堪えて、問題を指摘・是正する。つまり叱る事が大事だと思うのです。

僕「分かった?」
お「わかた…」

僕に注意されたお布団小僧は、少し寂しそうでした。
そして小さなドライバーを道具箱にそっと閉まったのです。
僕はちょっと可愛そうな事をしたかな、と思ったその時です—

お「こっち?(ニヤリ)」
僕「…。(汗)」

違うんだよ、お布団小僧。
僕は分からない事を勝手にやってはイケないと言ったのであって、使用する道具が間違ってるとは一言も言ってないのだよ。
そんな事には気にもせず、お布団小僧は大きな六角レンチを手にやる気です。

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色々あったものの…
結局ベッドは30分もかからずに組み立てが完成しました。
足の裏に傷防止用のフェルトも張り、予定だった位置にセット完了です。
あとはここに、今日まで仮の寝床としていた床直置きのマットレスを乗せるだけです。

お「?」
僕「どした?」
お「これ なに?」

お布団小僧は完成したベッドフレームを見て、首を傾げています。
なるほど。恐らく彼はベッドフレームを見たことが無いのでしょう。
だって彼は『お布団小僧』なのですから。

お「おふね?」
僕「違うよ。これはベッドって言うの」
お「べっど?」
僕「そう…(ニシシ)」

マットレスをフレームの上に乗せた時、お布団小僧はベッドの意味を理解しました。

お「おぉ!おぉぉぉぉぉ!」

お布団小僧は初めて見るベッドに大興奮です。
一足先にマットレスに飛び乗り寝転がる僕を見て、その目をキラキラさせています。
そして少し興奮した様子でジタバタと足踏みをさせました。
でも全身で驚きと興奮を表現するお布団小僧ですが、一向に、ベッドで寝っ転がろうとしないのです。

僕「寝てみないの?」

僕がそう呼びかけても、お布団小僧は首を振るばかり。
どうやら初めてのベッドに少し照れていたらしいのです。

僕「いいから!おいで!」

僕が強引に誘うと、お布団小僧はわざとイヤそうに、だけど頬を赤らめ緊張した面持ちで、ようやくベッドにやって来ました。

お「…。(ちょん)」
ビヨーン
お「…。(ちょんちょん)」
ビヨーン ビヨーン

お布団小僧がベッドを警戒するように指先でつつくと、ベッドがスプリングで小刻みに揺れました。
そしてその度にお布団小僧は、目を丸くして驚くのです。

お「おぉ…おぉぉぉぉぉぉ!」

同じマットレスなはずなのに、やはりスプリング機能があるベッドに乗せると弾力性が増します。
これまで床に直置きしてたマットレスの本性を知ったお布団小僧は、ついに我慢しきれないと言った様子でベッドに飛び乗ったのです。

お「おうん♡」
バヨーン
お「ほおん♡」
バヨーン

全身で初めてのベッドを体験したお布団小僧は、その喜びをどう表現していいのか分からず、ついにはうつ伏せ状態で頭をマットレスに埋め、足をバタバタさせています。

僕「今日からはここで寝るんだよ?」
お「…。(ピタッと静止)」

僕がそう言うと、お布団小僧はばたつかせていた体をピタッと止めました。
そして信じられないと言った様子でガバッと起き上がり—

お「ほんとう!?」
僕「本当」
お「ほんとう!!」
僕「本当!!」

僕に何度も確認したのです。
今日から我が家はベッドでの暮らしが始まります。
でもここが僕達の、素敵な寝床である事にかわりはないのです。

「すてきね ぼくたちの おふとん」

よし、お布団小僧。
次はさっき買った、無印良品のシーツを一緒に取り付けしよう。

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by ohutonkozou | 2014-03-14 17:24

妖怪達と暮らす 五流作家の 日々のこと


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