#3『小話 かたぢけぬの日』

先日のベッド搬入以来、僕とお布団小僧の間でちょっとしたブームがあります。
それは「かたぢけぬ」。
「かたじけぬ」ではなく「かたぢけぬ」です。
例えば近所のスーパーに行く直前、僕がすっかり靴を履いてしまったとき—

僕「ごめん!部屋からお財布取ってきて!」
お「おぉ!」

お財布受け取り。

僕「かたぢけぬ」
お「うむ」

またその道中、お布団小僧がふと公園のブランコに気を取られてしまったとき—

お「…。(ジーッ…)」
僕「今日は公園行かないよ。明日にしよ?」

諦め。

お「かたぢぬ」
僕「うむ」

といった具合です。
僕は勿論のこと、お布団小僧もこの「かたぢけぬ」と言う響きがすっかりお気に入りの様子。
だから僕達は「かたじけぬ」ではなく「かたぢけぬ」なのです。
でもこの手軽な武士道ごっこ「かたぢけぬ」ブーム、思わぬ所で弊害をもたらし始めていたのです。
それは昨夜の事でした—

お「かたぢけぬっ!かたぢけぬっ!」

よっぽどその響きが気に入ったのか、お布団小僧が「かたぢけぬ」を連呼して部屋を走り回っています。
意味なんてありません、きっと。
子供が『楽しいスイッチ』を作動させるのに、意味も脈略も必要ないんです。
でももう、すっかりいい時間です。これはやっぱり近所迷惑だと思うのです。
だから僕は注意することにしました。

僕「もう夜だから、やめなさい」
お「かたぢけぬっ!」
僕「…。(汗)」

お布団小僧は相変わらず部屋をバタバタと走り回っています。
僕達の「かたぢけぬ」ブーム。
素敵な響きの言葉ではありますが、使い方と状況次第ではこんな事になってしまうのです。
いや。むしろ会話が成立してしまうだけに、タチが悪いのです。
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by ohutonkozou | 2014-03-16 16:48

妖怪達と暮らす 五流作家の 日々のこと


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