#4『ねむられないの日』

ここ数日は、ようやく春の訪れを感じる日が続き、『晴れ』というだけで何処か気分も清々しく。
やはり全ての生き物にとって、天気と季節は非常に重要な要素なのだと改めて実感します。
僕としても洗濯物が乾きやすく、非常に助かります。(…所帯じみてるなぁ)
でも今日は、朝からお布団小僧の様子が少しおかしいのです。

僕「よし。洗濯終了!」
お「…。(ボーッと)」
僕「お布団小僧?」
お「…?(やはりボーッと)」

洗濯物を干し終わったときでした。
洗濯ばさみを手に持ったまま、お布団小僧はどこか上の空。
久々に訪れた春の陽気にほだされているだけかな、と思ったのですが明らかに様子がおかしいのです。
目は虚ろで、僕が話しかけても「うへへぇ」と気の抜けた愛想笑いばかりです。

お「ふわぁぁぁぁ…」

そして大きなアクビ。
よく見れば、目の下にうっすらクマもある気がします。
それは完全に寝不足の症状でした。

b0325109_15472177.jpg



確かに昨晩のお布団小僧は、なかなか寝付けない様子でした。
ベッドに入り、ちょうど僕がウトウトし始めた時—

お「ぅぅ…ぅぅん…」

お布団小僧が寝苦しそうに声を漏らしました。
初めは特に気にはしなかったのですが、その後もお布団小僧は「ぅぅん」とため息とつかない声を漏らしていました。
そしてゴロゴロと寝返りを打ったかと思うと—

ペシペシ。

体を起こし、枕を整える様に手で叩き、再び横になったのです。
でも数分後にはやっぱり—

お「ぅぅぅん…」

寝苦しそうに声をあげ、寝返りをゴロゴロと打ったのです。

お「ねむられない…」

そう呟くいたお布団小僧は、少し怠そうに首をクルクルと回しています。
お布団小僧から受け取った洗濯ばさみで、物干し竿の枕カバーを留めたとき、僕は昨晩、お布団小僧が何度も枕を整えていた事を思い出しました。

「枕が合ってないのかもしれない」

考えれば当たり前です。我が家にある枕は、全て大人サイズ。小さなお布団小僧の首にフィットするはずありません。
僕は寝ぼけ眼のお布団小僧を見て、今まで気付かなかった事に申し訳無い気持ちで一杯になりました。

僕「枕、買おう」
お「まくら?」
僕「もっと小さいヤツ。そしたらきっと大丈夫だから」
お「ねむられる?」
僕「うん」

洗濯物を干し終えた僕達は、お布団小僧用の枕を探しに街へ出ました。
本当ならお布団小僧には家で昼寝でもしていてもらいたかったのですが、いかんせん大人サイズの僕では子供用の枕を吟味しようがありません。
ジャストフィットの枕を探すには、申し訳無いですが、やはり本人を同行させるのが1番だと思ったのです。

僕達は、渋谷にある東急ハンズへ向かいました。
きっとあそこなら、様々な種類の枕が選べると思ったからです。
ハンズに向かう車中。小春日和の日差しが、とても暖かでした。
助手席のお布団小僧はコクリコクリ…と舟を漕ぎ、コツンと窓に頭をぶつけては「うへへ」と妙な薄ら笑いを浮かべています。
そしてハンズの駐車場でチケットを受け取る頃、お布団小僧は僕の背中ですっかり眠ってしまっていたのです。

「やっぱり家で寝かせた方がよかったかな…」
僕がそう思ったのもつかの間。
店内の賑やかな雰囲気を察知したお布団小僧は、それまでのお地蔵さんの様な半眼から一気に現世に戻ってきたと言った様子で、目を見開きました。そして店内にある様々なグッズに興味津々となったのです。

お「これ!」
僕「え?」
お「これあったら よーく ねむられる」
僕「…。(唖然)」

どうして恐竜のおもちゃでよく寝られると言うのだ、お布団小僧。

お「これで よーく ねむられる」
僕「…。(汗)」
ピロピロピロピロ!

…いい目覚まし時計になりそうね。
その近未来型の銃。

お「よーく ねむられる」
僕「…。(半眼)」

眠るの意味、違うだろ…
そのドラキュラ退治セットのおもちゃ、戻しておいでお布団小僧。

こうして僕達がようやく寝具売り場に辿り着いたとき、お布団小僧の目はすっかり冴えてしまっていたのです。

お「おぉ!?」
僕「いっぱいあるね」

寝具売り場の枕コーナーには、予想以上に様々な製品が並んでいました。
お馴染みの低反発に高反発。昔ながらのそば殻枕に、祖母が昼寝でよく使っていた竹を編み込んだモノ。中には炭や緑茶を使った見慣れぬ製品までありました。
僕達はとりあえず良いと思った物を、片っ端から試す事にしました。

僕「どう?」
お「うーん…」
僕「これは?」
お「うぅぅん…」
僕「じゃぁこっちは?」
お「うぅぅぅぅん…」

しかし悲しいかな、これだけ枕の種類があるにも関わらず、そのどれもがお布団小僧にはシックリ来なかったのです。
こうなれば最後の手段です。
多少値段は張るかも知れませんが、店内にいる枕専門の販売員に見立ててもらうのが1番です。

販「これはどうかしら?」
お「…。」
販「こっちの方がお好みかしら?」
お「…。」
販「そんなに緊張しなくていいのよボク?」
お「…。」

でもダメでした。

僕「お姉さんの見立て、どうだった?」
お「ドキドキした♡」
僕「…。」

僕も枕フィッティングだけお願いしようかな…。
結局僕達は、新しい枕に出会えないまま東急ハンズを後にしました。

帰宅後。
取り込んだ洗濯物を畳みながら「明日、二子の高島屋に行ってみようか?」僕がお布団小僧に言いかけた時でした。

僕「?」

先程まで靴下をクルクルと畳んでいてくれたお布団小僧が、いつの間にかすっかり眠っていたのです。
それも取り込んだ洗濯物を体中にまとい、まるでハムスターの様に洗濯物のかまくらをつくり、眠ってしまっていたのです。

お「…zz …zz」

睡眠不足に加え、今日の疲れも勿論あったのでしょう。
でもお布団小僧は、寝返りを打つわけでも無く、もちろん寝苦しそうな小声を漏らすわけでもなく、ただ気持ちよさそうに洗濯物の中で眠っていたのです。

僕「ごめんね」

僕がお布団小僧を起こさないよう、ベッドへ運ぼうとした時でした。

お「にゃ… む…」

お布団小僧と一緒に、洗濯物のかまくらから一枚のバスタオルが引きずり出されたのです。それは眠ったお布団小僧がギュッと手に握っていたモノでした。
そのままの状態でお布団小僧をベッドに寝かせると、彼は眠りの中でその手をもしゃもしゃと動かし、握っていたバスタオルをたぐり寄せました。
そしてそのタオルに顔を埋めて再び寝息を立て始めたのです。

問題解決の答えは、意外にも身近にあったのです。
お布団小僧の小さな頭に最適な枕サイズ。それは我が家にあるバスタオルを折りたたんだサイズだったのです。

僕が作った(…畳んだだけですけど)バスタオル枕に変えてから、お布団小僧の睡眠不足はすっかり解消されました。

僕「どう?」
お「ねむられるー!」

ただ販売員のお姉さんにしてもらった枕のフィッティングが忘れられないらしく—

お「ねむられないのぉ〜 あぁ〜ん♡」

たまに睡眠不足のフリをしては、僕をハンズに連れて行こうとします。
寝ろ、お布団小僧。

b0325109_15473728.jpg

[PR]
by ohutonkozou | 2014-03-17 15:48

妖怪達と暮らす 五流作家の 日々のこと


by ohutonkozou