#12『小話 おかいものの日』

お布団小僧とサミットへ行くとき、気を付けなくてはならない事があります。
それは—

僕「ニンジンとぉ…」
お「きっとかっととぉ…」

キットカット戻す。

僕「しめじとぉ…」
お「かんとりーまーむとぉ…」

カントリーマーム戻す。

僕「…。(膠着)」
お「…。(状態)」

買い物カゴに、お菓子をぽいぽいと放り込んでくる事です。
いや、何もお菓子を買ってあげないとか言っている訳ではないのです。

お「…かって」
僕「ダメ」
お「…なんで」
僕「もうプリン買ったでしょ?」

僕もなんとか説得を試みます。
闇雲に怒らず、理由をきちんと説明してお布団小僧を諭す事が大事だと思っているからです。
でも—

お「いや!」
僕「いやじゃない!」
お「いや!いや!」
僕「我が侭言うんじゃない!」

小さな子供にとって、理由より欲求の方が断然大きい事も、また道理。
結局こんな感じの小バトルが勃発してしまうのです。
しかしここで折れてしまっては、大人として立つ瀬がありません。
お布団小僧に買ってあげた以外のお菓子を淡々と棚に戻し、僕は夕飯の買い物を粛々と続けるのです。

僕「…。」
お「ふん!」

お布団小僧は少しムッとした様子で、スタスタと先に行ってしまいました。
いいのです。これで、いいのです。
さぁ後はお肉と、在庫が切れた調味料を何個かカゴに入れたら買い物終了です。

精肉売り場は、冷凍食品コーナーの向こうにあります。ちょうど今、お布団小僧がプリプリと怒って歩いてる棚の向こう側です。
でも、そこにも一つ問題が潜んでいるのです。

冷凍食品コーナー。
そう。そこにはつまり、アイスクリームも置かれているのです。
お布団小僧、きっと今度はカップアイスを買い物カゴに入れてくる筈です。

お「…。(ジーッと)」

やっぱりです。
先程まで怒りにまかせて速い足どりで歩いていたお布団小僧が、アイスコーナーの前でピタッと止まりました。
そして食い入るような視線で、ストッカーに陳列された色とりどりのアイスを眺めています。

お「しんは…つ…ばい…」
僕「…。(汗)」

獲物を射るような視線でお布団小僧が、ブツブツと何かを言っています。
ちょっと怖いぞ…お布団小僧。
その時でした—

お「ふーんだ」
僕「!?」

お布団小僧はアイスを手にする事無く、再びスタスタと歩き始めたのです。
そしてその先にある精肉コーナーに着くと—

お「おにく はんがくしーる ついてるよー!」
僕「!!(赤面)」

恥ずかしげもなく大きな声で僕を急かしたのです。

お布団小僧のお陰で美味しそうなお肉が安く手に入りました。
あのままアイスコーナーで再び小バトルをしていたら、この半額お肉は誰かに取られてしまっていたかも知れません。
僕はアイスをガマンしたお布団小僧を褒めてやろうと思いました。

僕「偉かったね」
お「ふへへへ」

その瞬間です。
お布団小僧は、凍てつく様なニヒルな笑みを浮かべ呟いたのです。

お「あいすは れーとーだから さいごだもんね…(ニヤリ)」
僕「…!?」
お「ふへへへ…」

薄ら笑いを浮かべ、イソイソと調味料コーナーへ向かうお布団小僧。
その背中はまるで、僕にさっさと買い物を済ませる事を催促するかの様です。

僕「…。」

精肉コーナーから、延々と響く謎のテーマソング。
蒼白いLEDの照明が、陳列された生肉を赤々と照らしています。
陳列棚一帯に広がる冷気が、なんだかいつもより冷たく感じました。
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by ohutonkozou | 2014-03-26 17:45

妖怪達と暮らす 五流作家の 日々のこと


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